角膜の病気

角膜とは

黒目の表面にある透明な薄い組織で、角膜上皮によってダメージや感染から保護されています。すぐ後ろにある水晶体と共に目に入ってきた光を屈折させる役割を担っています。角膜上皮は常に外気に接しており、コンタクトレンズに直接触れるため、角膜上皮が傷付いてしまうと角膜にダメージや感染が起こります。目は過剰な免疫反応を抑制する傾向があるため治癒力が低く、深刻な視力障害につながる可能性があります。また、角膜は鋭敏な感覚を持っているため強い痛みを生じることも少なくありません。目の痛みを感じたらできるだけ早く眼科を受診して、適切な治療を受けるようにしてください。

角膜異物

角膜異物角膜に異物が付着している状態で、角膜上皮に刺さっている状態も含みます。強い痛みを生じ、感染しやすい状態であり、濁りなどによる深刻な視力障害や角膜潰瘍などを起こす可能性がありますので、すぐに眼科を受診してください。
まつげや虫、砂、ホコリなどによって生じるケースが多いのですが、特に注意が必要なのは金属を加工していて目に飛び込んでしまう微細な鉄片や鉄分です。錆が周囲に沈着して激しい痛みや角膜の濁り、炎症、視力低下を起こす可能性があります。
当院では細隙灯顕微鏡で観察しながら丁寧に除去し、錆がある場合はその部分まできれいに除去します。完全にきれいになったら、抗菌眼軟膏などで感染を予防します。

感染性角膜炎

角膜に細菌やウイルス、真菌(カビ)、アカントアメーバ(微生物)などの病原体が感染して炎症を起こしています。現在ではコンタクトレンズ使用による角膜感染症が大半を占めています。使い捨てソフトコンタクトレンズの期限超過使用、手指やレンズの不十分な消毒が大きな原因になります。

細菌性角膜炎

細菌感染によって生じている角膜炎です。コンタクトレンズの適切ではない使用法やケアなどによって生じることがあります。原因菌によって症状や進行は変わりますが、深刻な視力低下につながる可能性がありますので、目の痛み、目やにが増えたなどの症状に気付いたら早めにご相談ください。抗菌点眼薬による治療で多くの場合は治りますが、状態によっては内服薬の処方、点滴、手術などが必要になるケースもあります。

真菌性角膜炎

症状は細菌性角膜炎とほぼ同様ですが、抗真菌薬による治療が必要です。真菌はカビの一種であり、角膜内で胞子になってしまうため、治療には時間がかかります。失明の可能性もゼロではないことから、適切な治療をしっかり行い治すことが重要です。

アメーバ角膜炎

微生物のアカントアメーバに感染して生じます。川や池、砂場だけでなく、水道水にもアメーバが生息していることがあり、上下水道が完備した都市部でも感染することがあります。ソフトコンタクトレンズを使用している方の発症が大半を占めており、使い捨てレンズを何度も使う・ケアの方法が間違っている場合に生じやすくなっています。感染性の角膜炎の中でも激しい痛みを生じやすく、重篤な場合は専門病院に紹介して治療をお願いすることになります。

角膜ヘルペス

唇などに小さい潰瘍を生じるヘルペスウイルスが角膜に感染して発症します。ほとんどの方は幼少期にヘルペスウイルスに感染しますが、9割の方は生涯に渡って無症状です。角膜ヘルペスでは感染したウイルスが目の奥にある三叉神経節に潜伏します。免疫が低下すると角膜ヘルペスを発症しやすくなり、再発を繰り返すこともあります。発症して放置してしまうと角膜の深刻な混濁から角膜移植が必要になる可能性もあります。目の痛み、いつもよりまぶしさを強く感じる、充血などの症状があった場合はできるだけ早く眼科を受診して適切な治療を受けるようにしましょう。また、再発の場合も早期の治療が重要です。

角膜びらん

びらんは潰瘍よりも浅い炎症のことで、角膜びらんは角膜表面がある程度の範囲に渡って浅く傷付いている状態です。角膜びらん自体は皮膚であれば擦り傷のようなものであり、角膜を保護する点眼薬や眼軟膏による治療、圧迫眼帯、医療用コンタクトレンズの装用などの治療で治すことができます。ただし、眼内異物、逆さまつげ、コンタクトレンズ、結膜炎、ドライアイなど角膜びらんを起こす原因は様々ですので、原因をしっかり見極めた上でそれに合わせた治療を行うことが不可欠です。傷からの感染を防止するためにも、ゴロゴロする異物感、目の痛み、涙目、充血などがあった場合には早めに眼科を受診してください。なお、再発を繰り返すことがあり、その場合は起床時に突然強い症状を起こすことがあります。コンタクトレンズは角膜の状態が十分回復するまで使用を控えてください。

円錐角膜

角膜中心が薄くなる進行性の疾患で、両眼に起こることが多く、進行の程度には左右差があります。角膜自体が前方に突出するため、角膜が歪む不正乱視と近視が強くなります。多くの場合は思春期に発症して、30歳頃になると進行が止まりますが、成人してから発症して進行が続くケースも存在します。発症の原因はまだ不明ですが、アトピーなどに合併しやすいとされています。進行すると瘢痕化や急性水腫を起こし、深刻な視力低下につながる場合もあります。軽度の場合には眼鏡などによる矯正を行い、中等症ではハードコンタクトレンズによる視力矯正が必要になります。進行すると角膜移植などが必要になることもあります。

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